第4回|非営利型株式会社Polaris|代表取締役|市川望美さん
2015-09-29 Updated
── 初めてお会いしますが、写真で拝見していたよりもかなり細い(そして7月初旬にして真夏のような小麦肌……)ですね。トレーニングか何かされているのですか。
加藤 この間のゴールデンウィークまで、カメルーン人とカンボジアンタイガーのメンバー枠を争っていたからね。
── ええっと、それはプレイヤーとしてという意味でしょうか。
加藤 もちろん、カンボジアトップリーグの外国人選手として。でもGMと監督の判断で選手から外されてしまったし、僕自身もスケジュールの関係でリーグ出場は難しかった。今年は出場しないという意思決定をした5月末からは、そんなに厳しいトレーニングはしていないです。
── サッカーチームのオーナーであり、プレイヤーも目指されていらっしゃるということでしょうか。しかも“今年は”ってことは来年も考えていらっしゃる、と。
加藤 そうです。来年はスケジュールも調整してコンディションも整えて挑戦する予定。年齢的にはどんどん体力が落ちていく一方で、カンボジアのサッカーレベルはこれからどんどん上がっていくから、そんな中でチャンスがあるとしたら、来年が最後かもしれない。でも身体作りをしっかりやれば、まだまだいけます。
── オーナーがプレイヤーとして参加するとなると、他のメンバーは気を使ってしまったりしないのでしょうか。
加藤 うーん、まあそうだね。最初のうちは“ヘイ!”って言えば必ずパスが回ってきたし、選手が僕を呼ぶときは“Sir”って言葉を使ってきて。でもそれじゃあ試合にならないから、フィールドの上ではフラットな関係で考えてくれ、とお願いしました。最終的には公平に現段階の実力をみて、カメルーン人に選手枠を譲ったカタチになったかな。
── そうは言っても、GMや監督にとっては難しい判断となったのではないでしょうか。
加藤 うちのGMが記者会見で、カンボジアのサッカーリーグでやることの難しさを問われたときこんなことを言っていました。「クラブ経営には3つの難しさを感じています。1つはカンボジアサッカー協会に計画性がないこと。1つはカンボジアサッカー協会に予算がないこと。そしてもう1つは、オーナーが選手になりたいと言っていること。」って。笑。
── GMのお気持ちをお察しします。
ニホンバシイチノイチノイチにて本日の焼き魚膳。店名と住所が同じなので、待ち合わせにぴったりですね。
── 昔からプロサッカー選手を目指していらっしゃったのでしょうか。
加藤 いいえ。サッカーは高校の時で辞めていました。遊びでのサッカーはずっとやっていたけれど、本気のサッカーはもうすることはないだろうな、と大学生時代は思っていました。サッカーもいいけど、お金持ちになりたい、女の子にモテたい、という気持ちが強くて。そうなるためにはサッカーじゃなくて経営者になることだと考えました。サッカーって儲からないし。
── それでまず、コンサルティング会社に就職されたのですね。
加藤 今思えばコンサルタントと経営者って全然違うのだけどね。経営者になるならコンサルだ!と思って就職しました。でもコンサルティングの仕事って、あなたの会社の存在意義ってなんですか?世の中に対して提供できる価値は何ですか?って経営者に問いかけるわけ。モテたい、儲けたい、って言ってる人間が。それってなんか違うよねって気がして。自分のためだけじゃないもっと大きな目標が必要だと感じていたとき、ちょうどメッシが現れたんです。背の低いメッシが世界のトップチームで活躍する姿をみて、サッカー後進国でもある日本からメッシを超える人材が登場すれば、どれだけたくさんの人に夢や希望を与えることができるだろうか、そう思いました。その夢を叶えるために人生を逆算して考えてみると、このまま仕事を続けても達成可能性は下がっていく一方。コンサルティングの仕事も前職の環境も大好きでしたが、正直、焦りを感じました。
── 改めて“メッシ超え、バルサ超え”という言葉はどういう意味なのでしょうか。
加藤 メッシを超えるアジア人選手を輩出すること、バルサに勝てるクラブを保有すること。
── はわー。すごい目標です。ズバリ今、その達成可能性は何パーセントぐらいなのでしょうか。
加藤 可能性としては、現段階では高くはない。でも、可能性が高いとか低いとかっていうのは関係ないんだよね。ただ、やるだけ。今はカンボジアのクラブチームを買って、道のりはまだまだかもしれないけれど、確実に目標の方向に歩み出したというところですね。
加藤 実はチームのオーナーになって初めてわかったことがあります。それは、サポーターの気持ち。
── え!?
加藤 自分がサッカーをやっていたこともあって、いつも技術的な目線で試合を観戦していました。あの場面の、あのパスはもっとこうするべきだった、とか。日本代表戦になるとお揃いの青いユニフォーム着て、とにかく勝った負けたに一喜一憂する気持ちが全くわからなかった。でもオーナーになってみると、自分のチームの勝敗ってめちゃくちゃ重要な問題です。しかも、本当にシンプルに勝ったか負けたかの一喜一憂を、たくさんの人と共有できるってめっちゃくちゃ面白い。自分は今までサッカーの楽しみの半分も知らなかったんだと実感しました。
── サッカーをはじめ、スポーツが世界中で愛される理由はきっとそこにあるのでしょうね。
加藤 その通りです。カンボジアのサッカーリーグは歴史が浅くサポーターもまだまだ少ないです。日本では試合をリアルタイムで観戦することすら難しい状況です。バルサを超えるチームを生み出すには、バルサを超えるサポーターの存在も欠かせません。僕自身がもっともっと活躍して、カンボジア・日本の国内外問わず、たくさんのサポーターに愛される環境を創っていきたいと考えています。
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